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2015.03.23(Mon)

日雇い労働青年に訪れた謎の依頼とは?1990年代関西を舞台にした社会派サスペンス小説

『この女』 森絵都

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ハラハラする(ミステリー)

『この女』

森絵都

読みやすさ:
読みたい!
18

こんな人におすすめ!

・少し社会派な小説が読みたい
・物を作ることに対する執着心に共感できる
・意外な方向へ展開していく小説を読んで、ハラハラしたい

あらすじ

・日雇い労働の街で働く唯一の青年「甲坂礼司」は、文学好きで記憶力に優れている。
・そんな礼司の才能を嗅ぎ付けた、チェーンホテルの社長は礼司に300万円の仕事を持ち込んでくる。
・仕事内容は、「自分の妻を主人公にした自叙伝を書いてほしい」というもの。
・報酬の高さに仕事を引き受ける礼司だったが、やりたい放題の社長夫人の語る過去はデタラメばかり。
・ある事件をきっかけに、社長夫人が真実を語らない理由、不可解な仕事依頼の理由が明らかになっていく。

思わぬ方向へと真実が動いていくサスペンス小説

出版当初は「冒険恋愛小説」として売り出したようです。
けれど、恋愛小説の枠に留まらないテーマだと思います。

舞台は1990年代半ばの関西地域です。
現実に存在していた日雇い労働者が集まる「釜ヶ谷」を題材にしています。

明日の生活費もないようなドヤ街。
仕事もなく路頭に迷う老人たち。
大阪の市場を握るパチンコチェーン店の経営者。
海外出張や豪華な暮らしをするホテル経営者。

そんな格差社会の在り方や、その中で生きていく人のあり方を描いています。

「社長夫人の過去」「仕事依頼の本当の理由」「隠されている事実」など奇妙なストーリー展開にハラハラさせられ、最底辺の環境でも生きることを諦めなかった登場人物達の姿に勇気づけられます。

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この本の作者である森絵都は、元々児童文学作家として有名です。
不思議なホームスティを描いた「カラフル」や一人の女子の成長を描いた「永遠の出口」といった他の作品を読んだことがある人も多いかもしれません。
そんな人にとっては、「森絵都ってこんな小説書くんだ!!!」という良い意味での衝撃の一冊。

森絵都は、児童文学作家として今まで優しく、ユーモアのある作品を書いていました。
今回では、今までに扱ったことのない「格差社会、水商売、裏社会、新興宗」などディープで重めなテーマを扱っています。

「企業のトップが利益を求めて何が悪い。トップの利益は下へ向かって流れていく。それで潤う人間が仰山おるねんで」
「その陰で二万人の労働者が路頭に迷うことになる」
「それは私の責任か?あそこにおる者たちが好きで選んだ人生やろが」
「好きに人生を選べん人間もおる」

企業のトップに放った主人公の一言が、主人公の今までの苦しみを象徴してます。
読み物として楽しめるだけでなく、人の生き方について考えさせられる作品です。

最後の社長夫人の結子のセリフは泣けます。
「好きなように人生を選べなかった」と言った主人公を塗り替えるような一言に、胸を打たれる気持ちでした。

社会派や近代史要素を含まれているサスペンス小説を読みたい人は是非手にとってみて下さい☺
緻密な伏線が張り巡らせて、二回読みたくなる作品です!

みんなの口コミ、レビュー

ラストのオムライスを食べるシーンは何度も繰り返し読みました。
何度も泣きました。
森絵都さんの作品はこれが初めてで、以来はまってほとんど読みましたが、この作品がダントツ一番です。

出典 amazon

あまりにもこれまでのイメージと違う、ギラギラと生命力を感じさせるような作品なのに驚きました。
児童文学の作家だと思って読むと大変なことになります(笑)

出典 amazon

面白かったです。森絵都さんの作品の中でも特に好きです。
どうなっていくのかというドキドキ感でページをめくる手が止まりませんでした。

出典 amazon

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