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2015.02.25(Wed)

中学校での苛めをテーマに描き、文学賞をダブル受賞した話題作

『ヘヴン』 川上未映子

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泣ける(感動)

『ヘヴン』

川上未映子

読みやすさ:
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こんな人におすすめ!

・小難しいって言われる
・不満があっても黙りがち
・何が良くて、何が悪いなんて、よく分からない

あらすじ

・中学で、クラスメートから酷い虐めをうける主人公
・宛先不明の「わたしたちは仲間です」という手紙
・手紙をくれたのは、クラスで主人公ともう一人の虐められている女子・コジマ
・似たような境遇で、徐々に親しくなっていく主人公とコジマ
・圧倒的な暴力が続く中で、主人公とコジマはどのような選択を選ぶのか?

圧倒的な暴力の中で、どうして虐げられ続けるのか

TBSの人気番組「王様のブランチ」で以前紹介されていた一冊。
そこでの紹介をきっかけに購入し、読み始めました。

小学校高学年の頃から、学校でもなんでも「いじめはよくない」って言われて、
けど、いじめの基準ってどこか曖昧。

例えば、嫌いになったらいじめ?
いじめって思ったら、いじめって言うけど、色んな理由があるし、いちいちそう言っていたらキリなくない?
いじめの話題の当事者だった中高生の頃は、ずっとモヤモヤしてました。
考えても考えても、答えがでない。

そのモヤモヤの結果、何十冊も「いじめ」をテーマにした本を読んできましたが、
その中で唯一しっくりきたのが「青い鳥」と「ヘヴン」だけでした。
その二冊は本当に自信を持って勧められます。

「ヘヴン」は高校生の時に初めて読んで、その圧倒的な暴力の理不尽さに涙がでました。
ぐろいのは無理!って人はキツイかもしれません・・・・。けど、本当に暴力に晒された痛みが描かれているので、
勇気を出して読んでみてほしいです。

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髪の毛をつかまれて立ち上がらせれた僕は、チョークを両方の鼻の穴にさしこまれ、残った一本のチョークを持たされてその先を前歯で齧った。(略)吐いたものを舐めろと言って僕の頭を押さえつけた。笑顔がいくつもならんでいた。

主人公は、中学校で殴る蹴るといった暴力、ゴミを食べさせたり、私物を捨てられたりする。
どっから、どうみても主人公は悪くないし、これは明らかに苛め。なのに、主人公は暴力に屈し続けている。そんな主人公と関わってき始めたコジマ。汚いっていつも言われて苛められている。

最初は、主人公とコジマの手紙のやり取りで、どんどんと親しなっていく様子が、よかったねぇって感じで涙ぐましいです。
親しくなっていく二人とは関係なく、二人に対する苛めはどんどん過激になっていきます。

「ねえ、でもね、これにはちゃんとした意味があるのよ。これを耐えたさきにはね、きっといつかこれを耐えなきゃたどりつけなかったような場所やできごとが待っているのよ。そう思わない?」とコジマははっきりとした声で言った。

普段は苛められていても、主人公といるときは明るくイキイキとするコジマ。
コジマは宗教的な盲目さで、いじめられることに意味を見出します。

このバカ正直なまっすぐさ、上手だなーと思います。中学生の純粋さってこういうところあるよなーって。
けど、コジマとは違い、自分の虐められている理由が分からない主人公は苦しみ続けます。

でもなぜ僕はこわいんだろう。傷つくことが、こわいということなんだろうか。もしそれが僕にとってこわいことなんだとしたら、恐怖なんだとしたら、なぜ僕はそれを僕のかたちで変えることができないんだろう。苛めれれて、暴力をふるわれて、なぜ僕はそのままにそれに従うことしかできないんだろう。従うとはなんだろう。僕はなぜこわいのだろう。

「いじめ」を綺麗に書くのも正当化するわけでもなく、ただただその現実をリアルを描いています。

最後の主人公の目から見える世界の描写が本当に丁寧で、
こんなに世界を綺麗に描けるんだ、って胸をうたれます。
最初の圧倒的な暴力で涙がでてきて、最後の世界の美しさで涙がでてきます。

本書は、生きるか死ぬかの、圧倒的な暴力を描き、
苛めという枠を超えて、善と悪について問いただすことによって、話題をよんだ作品です。
気になった人は是非読んでみてください

みんなの口コミ、レビュー

読みやすさで群を抜く
この作家のほかの作品(とくに初期の短・中篇作品)は詩人気質の強い才気走った印象が強く、好き嫌いがわかれると思いますが、この作品はとても読みやすい。平易な文章でつくられています。
長篇ということももちろんありますが、作家としてより広く読者に向かおうとした飛躍作なのだと思います。
題材もふくめて凡庸な箇所も多いかもしれないけれど、きっとその凡庸さこそがこの作家の飛躍であったのだと思います。
ほかの川上作品が読みづらかったというひとは、是非読んでみてください。オススメしたいです。
出典 amazon

イジメの根源を問う青春小説
イジメに意味を見出し、受動的にやられるのでなく、自ら引き受けることで強くなろうとするコジマ。
イジメをすることに意味などなく、たまたまその時の欲求が一致しただけだと吐き捨てる百瀬。
その間を揺れ動く主人公。
イジメの描写は凄惨で見ていて辛いが、物語としては面白い。結末に流れてゆくまでの怒涛の展開に圧巻。
小説として面白いだけでなく、「善」や「悪」と言った当たり前のことについても考えるキッカケを与えてくれる読み物としても面白いです。
オススメです。
出典 amazon

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